外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「ふーん、真琴ちゃんもあのデパートで働いてるんだ?」

 亮太は側の壁へ寄りかかると、こちらを値踏みする。
 ぱっちり二重は柔和な印象を与えつつ白黒を付けたがっていそう。ただし、はっきりさせたい事柄は掴ませない。

「仕事、楽しい?」

「え? あ、はい。楽しいばかりじゃないですけど」

「買い物させる為にヘコヘコ頭を下げ、お世辞で持ち上げたりしなきゃいけないんでしょ? なのに楽しいんだ?」

「……」

「怒った? 僕は販売員になれないって意味で言ったの、悪気はないよ」

「気持ち良く買い物して頂ける配慮はしますが、へりくだってる訳じゃないです。販売員は品物を人から人に渡す橋渡しの役目を持ってー」

「ストップ! そういうの要らない。真琴ちゃんも一樹も真面目だなぁ〜」 

 同じ問いかけを花岡君にしたのかもしれない。その場合、彼も眉を潜めたであろう事が容易に浮かぶ。

「亮太だってアイドルという仕事にプライドがありますよね? じゃなきゃ、あんな大勢の観客を熱狂させられないもの」

「ーー今日のコンサート、観に来た?」

「はい。すごく良かったです! 感動しました!」
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