それらすべてが愛になる
 「う、わぁ……」

 通されたのは、見たこともないほど豪奢な一室だった。

 足元は大理石の床から一転してふかふかとした絨毯で、足を取られそうになるのを踏みとどまりながら、そろりと部屋の奥へと進む。


 バーカウンター付きの広いリビングと、その奥にはダイニング。他にもいくつかドアがあって、まだ部屋がありそうだ。

 リビングでひときわ存在感のあるソファーは、もはや何人掛けなのか分からない大きさで、その上には大きさが様々なクッションが等間隔に置かれている。
 こんなにあっても使いきれないだろうな、と部屋の豪華さに圧倒されてどうでもいい感想が浮かんだ。

 (…ここ、なんていう部屋なんだろう。スイート?いくらするんだろ…)

 部屋の真ん中で呆然と立っていると、背後から服の襟をぐいっと引っ張られてよろめいた。

 「わっ、な、何ですか!?」

 振り返ると、背後に洸が立っている。


 「とりあえず、その服全部脱いで」

 「は、はい…!?」

 「クリーニングに出すんだよ、外で待たせてるから早く」

 (…あ、なるほどそういうことか)

 「ついでに風呂にも入ってきたらいい、絨毯が濡れる。着替えは持ってるんだろ?」

 「…はい、持ってます」

 意図を理解しながらもその場で固まっていると、早くしろとばかりに半ば強引にパウダールームへと放り込まれてしまった。

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