それらすべてが愛になる
 「それで初めての海外旅行を一人で?結構チャレンジャーというか無謀だな」

 「そうですね、見通しが甘かったです」

 「ついてきてくれる彼氏とかいないのか?」

 油断しかけたところで思わぬ方向から話が飛んできて、飲みかけのワインがむせて咳き込む。

 「…今は、いないです」

 「別れたんだ?」

 「…そんな感じです。その人は私に興味もなかったので。
 初めはそれでもよかったんです。私なりにいろいろやってみたんですけど、やっぱり駄目で…割り切ったといいますか、」

 年齢を重ねれば、自然と恋愛ができるものだと思っていた。

 遠くから見ているだけでいいとか、目が合うだけで幸せだったりとか。
 そんな幼い、淡い経験を繰り返すうちに磨かれて、いつかキラキラと輝くのかもしれないと。

 けれど現実はそんなに甘くはなかった。
 きっともう、そんな恋愛は望めない。

 (なんで、今日会ったばかりの人にこんな話をしているんだろう…)

 きっとワインのせいだ。

 「見る目ないな」

 「……何も傷口を抉らなくても」

 「そうじゃなくて、相手の方が」

 「今度こそ、酔ってます?」

 「かもな」

 揶揄われているのだろうなと思いつつも、そのことを嬉しいと思ってしまったのも、ワインのせい。
 そういうことにしておこうと、清流はグラスに残りを一気に飲み干した。

 それからしばらく、もくもくと料理を食べたり、ふと、たわいもない話をしたりと穏やかな時間が過ぎていき――――


 翌朝目を覚ますと、目の前にバスローブ姿で眠る洸の姿が目に飛び込んできた。


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