それらすべてが愛になる
 清流は手元の封筒を見つめる。

 何だろう、預けた荷物を受け取るための控えとかだろうか。

 レセプションへ向かう途中で、昨日と同じコンシェルジュの男性が声をかけてくれた。
 手渡した封筒を開けて確認すると、にこりと頷くと、信じられない言葉が続いた。

 『今日からニ泊でお泊まりの、Seiru Kudoh様ですね』

 ゆっくりと、こちらでも聞き取れるくらいの速度の英語で伝えられた内容に、清流は唖然としてしまう。

 『あの、何かの間違いではないですか?私、予約なんて、』

 そんなのしていない。
 不思議そうな表情のコンシェルジュの男性が、カウンターでキーボードを打ち込んでいる。

 『確かにご予約が入っておりますよ、Takeru Kagashiro様という方からです』

 (嘘っ……!?)

 反射的にエントランスホールの方へと振り返るけれど、すでに出て行った洸の姿があるはずもなく。
 聞けば、預けていた荷物もすでに部屋に運ばれているのだという。

 『ご予約をいただいた時点でお支払いもすでに済まされているのですが、何か不都合な点がございますか?』

 気遣わしげな様子の男性に、清流ははっとする。


 『昨日言っただろ、ここでは恋人同士だって』

 『その設定まだ続いてたんですか…!?』

 『そう、ここ出るまで忘れんなよ?』


 (さっきのは、このことを言っていたの?)


 『……いえ、大丈夫です。チェックインをお願いできますか?』


 そうして案内された部屋は、一人で泊まるには広すぎるほどの部屋で。

 「いくらするの、この部屋…?」

 清流はこの旅行で何度目かの、声を失うことになったのだった。


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