それらすべてが愛になる

3. 決められたお見合い

 イタリアから帰国してから半月が経った、とある休日。

 清流は憂鬱な気分でこの日を迎えた。
 いや、正確には今日までずっと憂鬱だった。

 「いつまでそんな暗い顔をしているのよ。まったく、お相手がいらっしゃったらその顔はやめて頂戴ね」

 清流の浮かない表情を見て、叔母である早乙女佐和子(さおとめさわこ)は呆れたように言った。

 「…すみません」

 中学のときに立て続けに両親が亡くなって以来、親代わりとなって清流を育ててくれたのが、清流の母の妹である叔母夫婦だった。同時に、清流の父が経営していた小さな会社も彼らが引き継いだ。

 いずれは父のものだった会社を継ぎたいと願う清流に、叔母夫婦から一つの条件を出されたのは1年前のこと。

 清流がより良い条件での就職し、家を出て自立すること。
 そうすれば、ゆくゆくは会社を継がせてやってもいいというものだった。

 しかし、もし就職活動がうまくいかなければ、叔母の佐和子が決めた縁談を受け入れて結婚し家を出ること。

 そして現在、清流は後者の立場に立たされていた。

< 27 / 55 >

この作品をシェア

pagetop