それらすべてが愛になる
 それから教えてもらったホテルを訪ねたものの、結果はどこも同じだった。
 今は旅行シーズンで、どこも混み合っているのだという。

 駅前近くに戻ってきた清流は、さすがにため息を吐かずにはいられなかった。
 こういうトラブルに直面すると、やっぱりツアー旅行にするべきだったと思ってしまうが、そんなことを考えても仕方がない。時間はもうすぐ午後五時になろうとしている。

 (とりあえず、今日泊まれるところを探さないと…)

 スマートフォンとガイドブックを交互に見比べるも、もうこの周辺にはこれまで断られたホテル以外はなさそうだった。

 さらに悪いことは重なるもので、今日一日は持つと思っていた天気が急激に怪しくなったかと思うと、冷たい雫が頬を伝った。雨だ。

 ポツポツと、ガイドブックにも次々雨粒が落ちて染みを作っていく。

 「はぁ…もう最悪だ、」

 折りたたみ傘は持っているものの、嵩張るからとスーツケースに入れたままだった。こんな屋外で全開にして探すわけにもいかない。

 周囲の人々は、突然降り出した雨を避けようと駆け出している。
 清流も一瞬雨宿りをしようかと考えるも、すでに全身が濡れてしまっていた。今さら慌ててもどうしようもなさそうだと諦めて、空を仰ぎ見る。

 (困ったな……)

 これからどうするべきだろうかと辺りを見回すと、目の前の大通りを渡った先に細い路地が見えた。

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