それらすべてが愛になる
 どのくらいの間、そうしていただろうか。

 沈黙に耐えきれなくなって当たり障りのない話題を振ってみるも、相変わらず何の興味もなさそうで、目も合わない。まるで置物だ。

 ちらりと腕にしていた時計を確認すると、時間はまだあれから三十分も経っていなくて内心うんざりする。佐和子の話では、一時間は歓談の時間を作ると言っていたからだ。

 「あの、大河内さんは…今回の話にはあまり関心はないですよね?」

 お見合い相手に失礼かとは思いながらも、自分も失礼な態度を取られていることを思えば同じだろうと、半ば開き直った気持ちで聞いてみる。

 清流が口を開くと、善弥は初めてこちらを見た。

 「ええ、正直興味はなかったですよ。お見合いなんて言ったって、要は親公認の出会い系みたいなもんでしょ?」

 (結構はっきり言う人だな…)

 かしこまっていることに疲れたのか、姿勢を崩してきつそうに締めていたネクタイも緩めながら言う。おそらく普段は猫を被っているのだろう。大人しくて内気、なんて思っているのは母親だけのようだ。

 「それなのにいいんですか?このまま何も言わなかったら、話がまとまってしまうかもしれないですよ?」

 事前に話がついているとはいえ、相手がNOと言えばこの話は流れるかもしれない。そんな狡い考えが頭をかすめたとき、善弥は少しちらりと清流を見てから、笑みを浮かべた。


 「ええ、僕は構いませんよ。だって、君と結婚すれば会社が貰えるんでしょ?」


 一瞬何を言われたか分からなくて、清流はどういうことですか?と聞き返すと、今度は善弥の方が意外そうな顔をした。


< 33 / 55 >

この作品をシェア

pagetop