それらすべてが愛になる
 「叔母とは、どういう話をしたんですか?」

 「自分たちが清流の親代わりになったこととか、今回のお見合いのこととか?こっちからは今の提案の話をしたけど、後は俺に任せるって」

 (本当に…それだけ?)

 「なぁ、俺は清流がどうしたいか聞いてるんだけど」

 さっきまでと違い、こちらを見据える目も声は鋭くて一瞬体が強張る。

 あんなに綺麗だと思った洸の目が、今は怖い。
 自分の中にある弱さや狡さ、自分が見たくないものを否が応でも見せようとしてくるようで。


 「この話を受けるか、話を蹴ってまた叔母さんの言いなりになる生活に戻るか、自分で決めろ」


 就職が決まればあの家を堂々と出られる。
 叔母夫婦のプレッシャーに晒されることも、お見合い話を持ってこられることもない。

 洸の言うように六ヶ月間の試用期間を無難に過ごして、終われば婚約者としての関係を解消する。

 それまでの六ヶ月間、周囲に認めてもらえるように働ければ、もしかしたら継続して働けるかもしれない。


 自分に、そこまで期待してもいいのだろうか。
 また挫かれるかもしれないのに?


 「…お話はお受けします。
 でも、あなたと結婚はしません」


 そう言い切ると同時に、洸と正面から目が合った。


 「いい度胸だな」


 交渉成立。

 洸から差し出された手を取ると、洸は不敵に笑って清流の耳元に顔を寄せた。


 ―――絶対に、逃がさないから。


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