それらすべてが愛になる
 「ここはスリと強盗被害で有名な通りだ。
 さっきからずっと路地の奥にいる男女、あれもグル。進路を妨害する役で、後ろから来た二人組と挟み撃ちにして金品を盗るっていう典型的な手口。ここはそういう場所だ」

 淡々とした口調で話される内容に、清流の顔はさぁっと青ざめる。

 ターミナル駅の近くだから比較的安全なのかと思っていたけれど、ターゲットになる観光客が多いから逆に治安は良くないのだと教わって、清流は自分の考えが甘かったことを知った。

 「特に夕暮れ時から夜にかけてが一番危ない。あ、来たな」

 たった今横断してきた大通りを、シルバーメタリックのセダンが走ってくる。
 車が二人の側に横付けされて止まると、目の前の男性が後部座席のドアを開けた。

 「ぼーっとしてないで、早く乗れ」

 「え?の、乗る?私もですか…?」

 「泊まるところないんだろ?とりあえず俺が泊まっているホテルまで行く」


 ―――この人、今なんて?


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