それらすべてが愛になる
 清流たちを乗せた車はしばらく走った後に、とあるホテルの正面玄関へと滑るように入っていた。

 出迎えのドアマンが開けてくれた後部座席から降りて、建物を見上げる。すぐに高級ホテルだと分かる歴史を感じる外観に清流は驚いた。

 「それでは、明日は午後十二時にお迎えに上がります」

 槙野と呼ばれていた運転手が簡潔に告げて一礼する。
 清流のスーツケースはいつの間にかトランクから出されて、ポーターに引き継ぎされているところだった。

 「パスポートは持ってる?」

 「?はい、持ってますけど」

 「少しの間貸して」

 首から下げていたパスポートケースから取り出して渡すと、中を開く。

 「工藤清流、か。俺は加賀城洸(かがしろたける)。一回しか言わないからよく聞けよ?今から俺とは恋人同士、何か聞かれても俺の話を合わせること、いいな?」

 「……は、はい!?」

 思わず大きな声を出した清流に、洸は一瞬だけ苦い顔をした。

 「外国人というだけで目立つんだ。その上見ず知らずでこの身なりの女を連れ込んだと知れたら、俺の評判に関わる」

 「そ、それはそうかもしれませんけど」

 「不本意なのはお互い様だから我慢しろ。分かったら行くぞ」

 ほとんど反論する隙も与えられなかった清流が唖然としていると、ドアマンが気遣わしげにこちらを伺っている。
 こんな正面玄関で揉めていたら、目立って変な印象を持たれかねない。

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