あの夜君と話した最後の僕

プロローグ

「今日君と話すのが最後の僕だ。」
彼はそういうと、寂しそうな瞳で私の手に1枚の封筒を渡した。
「開けてもいいの？」
聞かなくても良かったはずなのに、私の口からはそんな言葉が発せられていた。
彼は一瞬驚いたような顔をしたがすぐにあの頃とおなじ優しい笑顔に戻った。
だが、彼の口からは何も発せられることはなくただただ私を見つめるだけだった。その瞳からは先程の優しい笑顔は感じられず悲しみと寂しさ、後悔や絶望色んな感情が伝わってきた。
私は彼が今すぐにでも目の前から消えてしまうのではと思い、強く強く抱き締めた。
しかし、彼を抱きしめていたはずの手からは何も感じず、いつの間にか彼の姿は消えていた。