トライアングル・ロマンス
あるところに泣き虫な女の子と双子の男の子がいました。
これは私が十一歳の時の話だ。
小学六年生に進級したばかりの私は、突然決まった母親の再婚で東京から関西に引っ越すことになった。
兵庫寄りの大阪府なのだと聞いて頭の中に日本地図を思い浮かべたけれど、兵庫も大阪も変わりなく東京からは遠い。簡単に戻ってこられる距離ではないことなんて、明白だ。
友だちとお別れするのは寂しかったけど、まだ幼い私が一人暮らしなどできるはずもなく、母に付いて行くという選択肢しか残されてはいなかった。
私が三歳の時に父は交通事故で亡くなっていたので、母は夜勤もしながら女手一つで私を育ててくれた。
子どもながらに母の苦労を理解していた私は、行きたくない気持ちを隠して笑顔で祝福の言葉を口にしたのだ。
「新しいお父さん! 優しい人だといいな~」
「ふふっ、とっても優しい人だから直ぐに仲良くなれるわ。それにね、向こうには男の子が二人いるんですって。今小学二年生って言ってたから、澪に弟ができることになるわね」
私に弟ができる。それも、二人も。
話を聞いた時は、少しのワクワクと仲良くなれるかといった不安で胸が一杯になった。対面する日までずっとそわそわしていたものだ。