トライアングル・ロマンス
それに、ここだけの話――お母さんの料理の腕はあまり良いとはいえない。
例えば数年前、たまごとわかめ入りの中華スープを作ってもらった時。
レシピ通りに作ればふわふわたまごのスープになるはずが、沸騰しないうちに卵を入れてしまったのだろう、黄色のどろどろした液体が出来上がった時の驚きは……今でもよく覚えている。
そして失敗したことにも気づかず「美味しそうにできたわ~」なんてのほほんと笑っているのが、うちの母なのだ。
「……おい、まずいんちゃうか。このままじゃオカンの手料理毎日食うことになるで。さすがに毎日“アレ”はきついやろ」
「しっ! 聞こえるやろ! ……でも確かに、これは死活問題っちゅーやつや」
「しかつもんだい?」
「生きるか死ぬかにかかわる重大な問題ってことや」
「ふーん、なるほどな」