トライアングル・ロマンス


徹くんと馨くんがひそひそと話す声が耳に届く。
話を聴く限りだと、どうやら二人はお母さんの手料理を食べたことがあるみたいだ。

さすがに死活問題は言い過ぎだと思うけど……お母さんだって食べられるものくらいは作れるのだから。まぁ、美味しいかどうかは別として。


――明らかに隠し味のチョコレートを入れ過ぎた激甘カレーライスに、塩辛いシチュー。焦げこげの玉子焼きやハンバーグなどなどエトセトラ。今まで食べてきたお母さんの手料理が脳裏を過ぎる。


料理が苦手なお母さんだけど……でも、仕事が忙しい中私の為に作ってくれることが、すごく嬉しかった。

だから一生懸命作ってくれるお母さんを悲しませたくなくて、いつも間違いを指摘することなく美味しいと言って食べていたんだっけ。


何とかお母さんの料理スキルを上げられないかと一緒に作ってみたこともあるけれど――お母さんは多分、天才的な料理音痴なのだろう。加えて少しのおっちょこちょい。

丸焦げになったり味が濃すぎたり薄すぎたり謎の隠し味を入れていたり……ほんのちょっと目を離した隙に、必ず何かしらのトラブルが起きているのだ。

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