トライアングル・ロマンス


「あらあら、ふふっ。お母さんとしてはちょっと悔しくもあるけど……澪の料理はとっても美味しいから、そんな風に言われると私まで嬉しくなっちゃうわね。それじゃあ二人からのご指名もあることだし……澪、お願いしてもいい?」


顔を綻ばせながら優しいまなざしで聞いてくるお母さん。もちろん、答えは決まっている。


「うん、任せて!」

「ふふ、ありがとう」


お母さんの隣で様子を見守っていたお父さんにも優しい笑顔でお礼を言われて、何だか照れ臭い気持ちになる。


「でも無理はしないこと。まだ小学生なんだから、毎日楽しく過ごすことが最優先だよ。子どもはたくさん遊ばないとね」

「せやせや! 子どもは遊ぶことが仕事やからな」

「うん、徹は勉強ももうちょっと頑張ろうな」

「ブフッ、徹、がんばりや~」

「なっ、うっさいわ馨!」


お父さんの言葉に乗っかった徹くん。しかしお父さんからの思わぬ返しに馨くんが吹き出して、顔を赤くした徹くんが反論する。


目の前で繰り広げられる賑やかな光景を見ていたら、この人たちがこれから私の家族になるのか、なんて実感がむくむくと湧いてきた。先程までの不安な気持ちは、綺麗さっぱりなくなっている。

隣に座るお母さんと顔を見合せて笑いながら――これからの生活が楽しみで仕方なくなっている自分がいることに気づいたのだった。

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