トライアングル・ロマンス
「ええ~、そんなことあらへんやろ」
「でも、もしかしたら……」
小さく波打つように、少しずつざわつき始めるクラス。
――馬鹿になんてしてないよって否定しないと。
そう思うのに、この雰囲気の中、何も言葉を返せない私。
俯いて泣きそうになっていれば、一番初めに話しかけてくれたサチちゃんが明るい声色でクラスの皆に呼びかけ始めた。
「皆ちょっと落ち着こうや。澪ちゃんが困っとるやろ! で、大悟は澪ちゃんがかわいいからて変に絡むのやめとき。そんなんじゃ嫌われるで」
サチちゃんの言葉に大悟くんは籠った声で何かを言っている。
周りの男の子たちから「大悟ってばダサいなぁ」なんて言われて「うっ、うるさいわ!」と怒ったような声を上げているのが耳に届いた。
そして、ドッと笑い声に包まれる教室。
だけど――私は周囲の目が気になってしまって、中々顔を上げられない。