トライアングル・ロマンス

ロマンスの暴君




――――ピピピピッ。ピピピピッ。

規則正しく鳴り続けるアラーム音。


起床時間を知らせてくれるこの音は、一日の始まりを告げる音でもある。
平日となれば、これから仕事に行かなければならないという憂鬱さに思わず耳を塞いでしまいたくなるけれど……休日ともなれば、話は別だ。

二度寝だってできるし、時間を気にすることなくぼうっとしていられる。友人との予定が入っていれば起床も億劫ではないし、むしろワクワクと心は弾むのだから、自分でも単純だなぁとは思う。

サイドテーブルに手を伸ばして目的の携帯端末に触れる。ホームボタンをタップすれば音は止み、静寂が訪れた。

体を起こして大きく伸びをしながら時刻を確認する。

今は九時を少し過ぎたところだから、ゆっくり朝食をとってから出かける支度をしても友人との待ち合わせ時間には十分に間に合うだろう。

今日一日の予定を頭の中で組み立てながらも、思考の半分は、今まで見ていた夢の世界へと沈んでいく。


――私が大阪に引っ越したばかりの頃の、懐かしい思い出だ。

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