トライアングル・ロマンス
「でもほんと、いい加減弟離れしないと。家族だからって、いつまでも一緒にいられるわけじゃないんだからね」
桃ちゃんの言葉が、ズシンと胸に圧し掛かる。
――そうだよね。姉弟だからって、いつまでも一緒にいられるわけじゃない。
私も徹も馨も、いつかは結婚してそれぞれ家庭を持って、共に過ごせる時間だってなくなっていくのだろう。少しだけ寂しいとは思うけど……私だってもうすぐ社会人になるわけだし、弟たちとの距離感も考えていかないといけないよね。
「うん、そうだよね。……よし、決めた。今日帰ったら、二人に言う!」
「言うって、何を?」
「もう毎日連絡取り合うのはやめようって。あと、甘やかしたりするのもやめる!」
「……ほんとにできるの?」
胡乱な目を向けてくる桃ちゃんに早くも決意が揺らぎそうになるけど、グッと堪えてきっぱりと宣言する。
「で、できるよ! これからは弟離れしてみせる!」
「ふ~ん。じゃあ頑張りなさい。それで、いい加減彼氏でも作りなさいよ」
「……桃ちゃん、疑ってるでしょ」
「そりゃあね。澪、何だかんだで弟くんたちに丸め込まれそうだし」
「だ、大丈夫! 姉として、ビシッと言ってみせるから!」
桃ちゃんは変わらずに疑いを孕んだ表情を向けてくるけど、私の意志は固いんだから。
今日帰ったら、すぐに連絡しよう。
そう心に決めて、最後の一口となるショートケーキを口に含んだ。
――だけど、そんな私の決心が、数時間後には呆気なく覆されることになるなんて。
追加で頼んだミニパフェを桃ちゃんとシェアして喜んでいたこの時の私は、知る由もなかったのである。