トライアングル・ロマンス
本当は、大好きなお母さんをとられてしまうようで、お父さんなんて必要ないのにって思ってた。私だけのお母さんなのにって。
私……寂しかったんだ。
でも、この人なら――お母さんのことを幸せにしてくれるだろう。
私が布団に入ってから、夜に一人で泣いているお母さんをこっそり目にする度、苦しくて堪らなかった。
だけどお母さんは、私の前ではいつも明るい笑顔を絶やさなかった。弱音を吐くことだって一切なかった。
だから私も、お母さんの寂しさには気づかないふりをしていたんだ。
だけど、渉さんなら――もしお母さんが泣いていたとしても、隣でその涙を拭ってくれるのだろう。寂しさも哀しみも全部包み込んでくれる、優しい人なんだろうなって。
心からそう思えるから。
二人の笑い合う姿を視界にとらえながら、嬉しくて、少しだけ寂しくて、でも温かい。そんな気持ちで胸がいっぱいになっていた。