トライアングル・ロマンス
「あ~、実はな。俺ら、東京の大学に行くねん」
「え? 二人とも、地元の国立大に行くって……」
「姉ちゃんのことびっくりさせたろ~思うて、秘密にしといたんや」
「……驚いたやろ?」
――開いた口が塞がらないとは、正にこのことだろう。
全っ然、気づかなかった。いやでも、二人が私を騙そうと嘘を吐いている可能性だって十分にあるわけだし……それに、二人が地元の大学に合格したという話は両親の口からも直接電話で聞いているのだ。どうも弟たちの話は、信憑性に欠ける。
とりあえず両親に真相を確かめてみようと思い、鞄から携帯を取り出した。通話履歴をスクロールして“実家”の表示をタップする。
耳にあてれば、呼び出し音が鼓膜を揺らす。待つこと四コール後、聞こえてきたのは母の声だった。
「は~い、もしもし澪? どうしたの?」
「ねぇ、徹と馨がこっちに住むなんて、私聞いてないんだけど? ……全部この子たちの冗談だよね? もしかして二人と喧嘩でもしてるの?」
「……あらら? 言ってなかったかしら? というか、お母さんが徹くんと馨くんと喧嘩なんてするわけないでしょ~。二人とも、とってもいい子だもの。ふふ」
笑って誤魔化そうとしてるみたいだけど……最初、明らかに変な間があったよね。もしかしてこれ、お母さんも一枚噛んでいるんじゃないだろうか。