トライアングル・ロマンス


通話を切れば、今まで事の成り行きを見守っていた弟二人からの無言の視線が突き刺さってくる。


「……仕方ないから、一緒に住むことを許可します」


わざと偉ぶった口調で告げてみたけど――パッと花が咲いたみたいに笑う二つの顔を見ていたら、私の頬も自然に緩んでしまった。


「よっしゃ! そうこぉへんとな」

「これからは姉ちゃんの飯が毎日食べられるやん! 楽しみやなぁ」

「馨は食いもんのことしか考えられへんのか!」


ギャアギャア騒ぎ始めた二人に実家に居た頃を思い出して懐かしさを覚えるけど……これからはこれが見慣れた光景になるんだろうなぁ。


“澪、何だかんだで弟くんたちに丸め込まれそうだし”


――数時間前に聞いた桃ちゃんからの言葉を思い出す。

どうやらその予想は大当たりだったみたいだ。結局私は、弟たちに振り回される運命らしい。


「「これからよろしくな? 姉ちゃん」」


目の前で楽しそうに笑うミルクティーとモカブラウン色の頭を思いきり撫でまわしてやれば、一人は「髪がぼさぼさになるやろ!」と、もう一人は「姉ちゃん力強ない?」なんて言って揃って唇を尖らせているけど……二人とも私の手を払いのけようとはせずにじっとしている。

こういう素直じゃないところも、可愛いんだよね。


荷物の片付けや今後のことについて考えたりとやることはたくさんあるけど……まずはお腹の虫を鳴らせた馨のためにも、二人に今日の夕食は何が食べたいか聞くところから始めようかな。


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