トライアングル・ロマンス
「まぁ落ち着いて。おかえり、徹」
「……ただいま」
仏頂面を隠そうともしないで馨の隣に座る徹は、かなりご立腹のようだ。
「今ご飯の用意するから。徹は手洗っておいで」
「もぉ洗ってきたわ」
「お、偉い偉い」
わしゃわしゃと頭を撫でてあげれば、びくりと肩を跳ね上げさせてから私の手を掴んできた。
「っ、……子ども扱いすんなや」
口を尖らせてジッと睨み上げてくる徹。でもその耳朶は赤く色づいているから、照れ隠しだってことはすぐにわかった。
いつもは甘え上手な弟に私が翻弄されっぱなしだけど、こういう不意打ちのスキンシップに、多分徹は弱い。
こういう反応をされると、やっぱり年下の男の子なんだなぁって。私の弟はかわいいなって。
つい、口元が緩んでしまう。
「ふふっ。はいはい、ごめんね」
キッチンに行って徹と私の分のオムライスを用意していれば「徹ばっかずるいやん」なんてぼやく馨の声が聞こえてきた。
オムライスをテーブルに置いて馨の頭も撫でてあげれば、満足そうに頷いてから再びスプーンを口許に運び始める。……うん、やっぱり私の弟はずるいくらいにかわいい。