トライアングル・ロマンス


「ふふっ、久しぶりね。徹くんも馨くんも、数か月見ない間に更に格好良くなっちゃったみたいね~」


お母さんは以前にも二人に会ったことがあるみたいで、気さくな様子で声を掛けている。

お母さんの言葉に嬉しそうに笑ったのは、私から見て右側にいる男の子。


「せやろせやろ! 俺、今年のバレンタインは十個もチョコもろたんやで」

「まあ俺は十一個もろたけどな」

「か、馨は黙っとき! たかが一個の差やろ!」

「でも十個中の四個は近所のおばちゃんたちからもろたやつやん」

「ぐわああうっさいねん!」


私たちが居ることすらも忘れているかのように口喧嘩(?)を始めてしまった二人。

お父さんはやれやれといった様子で溜息を落としてから「僕は飲み物を淹れてくるから、美歩さんと澪ちゃんは座って待っていて」とリビングまで案内してくれた。


二人の横をすれ違う時、左側にいた男の子と一瞬目が合う。咄嗟に小さく頭を下げれば、一拍置いて男の子もペコリと頭を下げてくれた。

――この子は徹くん、馨くん、どちらなのだろうか。想像以上にそっくり過ぎて、見分けるのには時間が掛かりそうだ。

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