トライアングル・ロマンス
真っ白な壁にふわふわのベージュのラグが敷かれたリビングは、おしゃれな観葉植物なんかも飾ってあって、全体的に落ち着いた印象を受ける。
けれど、床の端っこに散らばった折り紙の手裏剣やおもちゃのボール、テーブルの隅に付いている落としきれなかったのであろう落書きの跡からはどこか温かみを感じられて、安心する。
室内をそろーっと見渡しながら、対面式のソファに私とお母さんで並んで腰を下ろした。
テーブルを挟んだ向かい側には、お父さんと徹くん、馨くんが座っている。
「それじゃあ二人とも、自己紹介して」
お父さんの言葉に真っ先に手を挙げたのは、私から見て右側に座っている男の子。
「はいは~い! 俺は徹! 馨の兄ちゃんで、好きなものはお笑いとラーメン! あと体動かすのも好きやな。最近はドッジボールにハマってんねん」
溌剌とした笑顔がよく似合う元気いっぱいな男の子が、お兄ちゃんの徹くん。年相応といった感じで可愛らしい印象を受ける。
次いで徹くんの自己紹介を聞いた馨くんが口を開いた。
「俺は馨。徹の弟や。せやけど、ぜったいに俺の方がしっかりしとるけどな」
「なんやと馨!」
「だってほんとのことやし」
しかし自己紹介が始まるかと思いきや、再び始まった口喧嘩。
二人とも本気で喧嘩をしているわけではないと分かっているけれど、見慣れない光景に少しドキドキしてしまう。