トライアングル・ロマンス
「はいはい。全くお前らは……。ごめんね、よくあることだから気にしないで。しばらくすれば慣れると思うから」
眉尻を下げて少しだけ困ったような表情のお父さんは、「ほら、自己紹介の続きをしようか」と馨くんに声を掛ける。
「ほら馨! はやくしぃ」
「わかっとるわ。好きなものは……なんやろ。最近は近所の駄菓子屋に行くんがマイブームや。あと本読むのも好きやで。あ、あとかけっこも得意! 俺一番しかとったことないねん」
「え、すごい……!」
思わず零れた感嘆の言葉に反応したのは、馨くんではなく徹くん。
「俺やってかけっこめっちゃ速いんやからな! それにドッジボールん時はいっつも最後まで残っとるし」
「そ、そうなんだ! すごいね」
「せやろ?」
私の言葉に満足そうに笑う徹くんは、すごく可愛い。
しかし今度は馨くんが膨れっ面になっている。下唇を突き出してムッとした表情だ。