優しくしないで、好きって言って


「では俺はお食事の準備をしますので」

「はーい」


 軽い調子で返事して竜胆を見送ると、私はポスッとベッドの上に座り込んだ。

 ……にしても。


「瑛大……か」


 懐かしい夢だったな。

 もう随分と前の、私の中にある記憶。

 なのにまだあの時の光景が忘れられないなんて……ほんと、ダメね。


 さてっと。

 のんびりしてる時間はない。私もそろそろ支度しなくちゃ。

 動き出す前にひとまず、んーっと天井に向かって思い切り腕を伸ばした。 



「ありがと」


 そうして到着したのは、つい先日2学期の始業式を終えたばかりの、とある高校の校門前。

 いつも通り送ってくれた竜胆に小さく手を振り、車を降りる。


 柚葉(ゆずは)女学院──私の通う高校には、資産家や大企業の娘といった、名家に生まれた女の子たちが数多く在籍している。

 いわゆるお嬢様学校と呼ばれるだけあって、校舎は広いしセキュリティ対策も申し分ない。

 それでここに入ったのか。

 ううん、それはちょっと違う。


 偏差値70超えの進学校だから。だから私はここを選んだんだ。

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