虹橋の先へ
脱走


黒色の丸い瞳。
少しおどおどして、不安そうにきょろきょろしていた。
でも、話が弾むにつれてにっこり笑ってくれたその顔は、大好きなあの人によく似ていた。


あの後、皆に彼のことを尋ねてみても、皆首を傾げるばかり。



『今日は、クルルからの使者が訪ねてくる予定はないはずですが……』



誰に訊いても、夢でも見たのではないかという口振りだった。



(名前を訊いておけばよかった)



自分よりもずっと年下の、けれどもどこかほっとするような落ち着きが見えるあの男の子。



『絶対にまた逢いましょうね、オーリー』



(うん。約束、したんだもの)







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