虹橋の先へ
脱走
黒色の丸い瞳。
少しおどおどして、不安そうにきょろきょろしていた。
でも、話が弾むにつれてにっこり笑ってくれたその顔は、大好きなあの人によく似ていた。
あの後、皆に彼のことを尋ねてみても、皆首を傾げるばかり。
『今日は、クルルからの使者が訪ねてくる予定はないはずですが……』
誰に訊いても、夢でも見たのではないかという口振りだった。
(名前を訊いておけばよかった)
自分よりもずっと年下の、けれどもどこかほっとするような落ち着きが見えるあの男の子。
『絶対にまた逢いましょうね、オーリー』
(うん。約束、したんだもの)
< 1 / 41 >