虹橋の先へ
懐思
車の中には先客がいた。
「……まさか、このお嬢さんも一緒に帰るなんて言わないよな」
「残念ながら、そのまさか。言っても聞かないんだから仕方ない」
わざと聞こえるように言われたのだろう。
溜息とともに面倒だと吐かれてしまった。
「……大丈夫なのか」
「大丈夫じゃない。でも、それも了承済みだよ。……ごめん。極力、レジーに迷惑かけないようにする」
自分のことで頭を下げられるのを見るのは、けしていい気分ではない。
せめて、謝罪くらいは自分でさせてほしいのに。
そんなことすらできない、お姫様だと思われているのか。
そう思うと癪だが、ぐっと堪える。
ニールに会う為だ。
何度も心の中で繰り返した後、やっと発車したのだった。