虹橋の先へ


「おかえりなさい!」



そう声が聞こえたのか、聞こえなかったのか。
いや、確かに聞こえた。
『結婚して、まだ数日の新婚です!』と言われたような、そんな可愛らしい声。
それは記憶の中のジェイダそのものだったのに、姿を見ることは叶わなかった。
言うまでもなく、ロイに隠されているからである。



「何事もない?」

「な、な、ない。みんな、げんき」



客のことなどお構いなしに、バタバタともがく妻をやんわりと閉じ込めると、そのままこめかみの辺りに口づけを贈っている。



「そう。君は?」

「私も元気。お母さん!」



ジェイダはお母さんで、子供が見ていると言いたいらしい。
残念ながら、見ているのは彼らの子供だけではないが。
そんな返答に吹き出すと、ロイはようやく彼女の体をこちらに向けてくれたのだった。





< 23 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop