虹橋の先へ
「おかえりなさい!」
そう声が聞こえたのか、聞こえなかったのか。
いや、確かに聞こえた。
『結婚して、まだ数日の新婚です!』と言われたような、そんな可愛らしい声。
それは記憶の中のジェイダそのものだったのに、姿を見ることは叶わなかった。
言うまでもなく、ロイに隠されているからである。
「何事もない?」
「な、な、ない。みんな、げんき」
客のことなどお構いなしに、バタバタともがく妻をやんわりと閉じ込めると、そのままこめかみの辺りに口づけを贈っている。
「そう。君は?」
「私も元気。お母さん!」
ジェイダはお母さんで、子供が見ていると言いたいらしい。
残念ながら、見ているのは彼らの子供だけではないが。
そんな返答に吹き出すと、ロイはようやく彼女の体をこちらに向けてくれたのだった。