九條くんの15分

「だからいっその事、声掛けたらいいじゃん!」

「む、無理だよ」

「無理じゃない!毎朝15分ストーカーみたいに後ろ歩いてるだけじゃ、存在すら知られないままだよ」

「いいの!別に付き合いたいとか、気持ちを伝えたいとか、そんな厚かましいこと考えてるわけじゃないし」


それに───。
わざわざ存在が知れて、私の朝の癒しタイムがなくなったら……その方が嫌だなって思うから。


「もう!(あかね)はもう少し欲張りなくらいでちょうどいいのに」

「私は八愛(やえ)ちゃんが居てくれたら、他には何もいらないよ〜」

「んも〜!可愛いヤツめ〜!絶対、九条先輩に茜の存在を教えてたまるものか〜!」


私、日向 茜(ひなたあかね)を抱きしめて、ブンブンと振り回しながら叫ぶのは中学から一緒で大親友の岬八愛(みさきやえ)ちゃん。

私と同じ1年生で、高校でも奇跡的に同じクラスになれた。


そして、八愛ちゃんの言う【九条先輩】というのが、私が勝手に憧れて朝の癒しに15分間だけストーカーしている九条真冬(くじょうまなと)くん。

私は心の中で、勝手に"九条くん"と呼んでいる。
彼もまた、私たちと同じ学校の2年生で、校内でもたま〜に見かける機会がある。


そんな日は内心「ウルトララッキーデイ!」とガッツポーズを決めるのがお決まりだ。
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