劣情にmistake
❁第一話


「ね、殺してほしい人間いる?」


今、たしかにそう、言われた。
──────聞き間違いでなければ。

一度、ゆっくりまばたきをしてみたけど、目の前の景色が変わることはない。


現在、夜の8時を少し回った頃。

街灯がぼんやりと照らす通学路にて、私の行く手を阻むようにして立っている男の子がひとり。

“彼”は、つい5秒ほど前にとつぜん現れた。

ユーレイみたいに、なんの気配もなく。


「誰でもいいよ。嫌いなやつ憎んでるやつ邪魔なやつ、俺が全員消してあげる」


な……なんか、また物騒ワードが聞こえたような。


念のため、もう一度まばたきをしてみる。

二重に縁どられた瞳、ほんのり色づいた薄い唇、シュッと無駄のない輪郭。

………暴力的に綺麗な造形だあ……。なんて見惚れている場合じゃない。
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