劣情にmistake

「つまり、私は運よくたまたま生き延びた、と」

「そう。お前を見たとき、ちょうどたまたま、未来が欲しいなって考えただけなんだよ。本当に、たまたま」

「……ふーん、なるほどお……」


と返事をしつつ、全然理解できなかった。

人が死ぬ日は運命で定められてるって言ってたよね。
その運命が歯車狂わないようにするのが死神の使命だって。


「死ぬべき私が死ななかったら、夏川くんは怒られるんじゃないの」

「うん。このまま何もしなければペナルティがくだる」

「大丈夫なの?」

「別の人間を殺して数を合わせるからへーき」

「それってもっとだめでしょ」

「いいんだよ。周りはみんなやってる。倫理の観点からアレコレ言われてるけど、最終的に数さえ合えば問題ない」


ハナシが現実味を帯びたせいで、焦りと恐怖がいっきに押し寄せる。

私のせいで、別の誰かが死ぬかもしれない。
死ぬ運命になかった人の命が奪われるかもしれない……。
< 20 / 57 >

この作品をシェア

pagetop