劣情にmistake
「だめだよ、死ぬはずだった私が死ななくちゃ。別の人じゃなくて、私を殺してよ」

「それを決めるのはお前じゃない」

「っ、夏川くん、」


名前を呼びかけた瞬間、ひゅっと息を呑む。
底の見えない昏い瞳を、初めて、本当の意味で怖いと思った。


「俺の話を信じたなら自分の立場くらい理解しろ。お前が生きているのは、俺が生かしているから。……この意味がわかるか」

「っ、――――」


言葉を失う。
という経験を初めてした。

怖くて怖くて指先が震えて、涙までもがこみあげてきて。
頑張って堪えようと唇を噛んで。
それでも我慢できなくなって。

……溢れる。と思った寸前。


「っく、ははっ」

とつぜん笑い声が響いた。

見ると、夏川くんが肩を震わせている。
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