劣情にmistake
❁第二話



─────『お前やっぱり可愛いね』
─────『また明日の夜会いに来るから』


昨日の夜からずっと、夏川と名乗った死神のことを考えている。

ひどく綺麗な顔をして、冷たくもあたたかくもないぬるっとした手の温度に、どこか感情がないような冷静さを纏っていて。
現実味を帯びていない“死神”というワードがどこかしっくりきてしまう、そんな(ひと)だった。


ナツカワ。夏川。シニガミ、死神……。

ぐるぐる考えていたせいで寝不足のまま起きた朝、テレビのニュースで昨日の事故が取り上げられていた。

やっぱり結構大きい事故だったみたい。


『昨夜19時頃、○○市内○○交差点十字路付近にて。4トントラックが電柱にぶつかる事故があり、国道ーー号線では3時間にも及ぶ大渋滞が発生しました。車体は横転と同時に左側が大きく破損、運転手は助骨を折る重傷ですが命に別状はないとのことです。幸いにもこの事故で他の怪我人はありませんでした』


『巻き込まれる歩行者がいなかったのが不幸中の幸いですね。しかしこの事故、運転手は飲酒運転だったんですよね?』


『そうなんです、事故原因は運転手のアルコール摂取による飲酒運転で、検出された体内のアルコール度数は基準値の6倍以上だったとか─────』

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