劣情にmistake



「で、決まった? 殺したい奴」

 
19時、少し薄暗くなった学校からの帰り道。
昨日と同じように、その綺麗な顔はひょっこりと突然姿を現した。

今日もかっこいいから2重の意味で心臓に悪いよ。黒シャツに黒いスラックス、細身で高身長のその姿はやはり現実味を帯びていないくらい整っている。

のにも関わらず、開口一番でとんだ物騒な言葉を吐いてくれる。物騒にも程があるよ!


「夏川くん……また突然現れるんだね」

「言ったろ、明日また会いに来るって」

「言ってたけど、それ、わたしが誰かを指名するまでずっと続くの?」

「まさか。こっちにもタイムリミットがあるからね」


夏川くんと歩いていたら目立って仕方がないんじゃない? そう思って、昨日歩いた人通りの少ない道を選んで歩く。


「わたし、殺したい奴なんていないよ、考えたけど、死ぬなら自分でいい」

「変わったこと言うね、俺が折角生かしてやったのに?」

「生かしてくれなんて頼んでないし、運命に逆らうのもこわいし、」

「生きてる意味も見いだせないし?」


心の中を読まれたようでかあっと頬が熱くなる。
横を歩く夏川くんは至って冷静で、表情ひとつ変えやしない。なんだか負けた気分だ。
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