劣情にmistake


「で、なんで当たり前のようについてくるの?」

「昨日は途中で帰ったから」

「理由になってないよー……」

「別に、知りたくなったから」


死神といえど、わたしのことをなんでも知ってるわけじゃないのか。

この辺りで一番大きな高層マンションのオートロックを抜けて家に入る。

夏川くんが当たり前のように着いてくることは、もう私が何を言っても決定事項みたい。


「広い家住んでんね」

「よく言われる」

「他に誰か呼んだりするわけ」

「そりゃたまに、友達とか来たりするよ」

「へえ、友達いたんだ」

「……失礼」


いるよ。フツウにいる。だってごくフツウのジョシコウセイなんだもん。


「本当にここで暮らしてんの」

「毎日暮らしてるけど」

「にしては綺麗だな」

「生活感がないって?」

「うん、そう」

「わたししかいないからね」


へえ、と興味なさそうな返事が返ってくる。

死ぬはずだった命が、ほんとうはいつもひとりぼっちだってこと、知ってもなんとも思わないのかな。
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