劣情にmistake
「っ、あの」

「4トントラックが電柱にぶつかった音だよ」

「……え」


「場所はお前から見て約40メートル先の十字路を左に曲がったすぐのところ。原因は飲酒運転。体内のアルコール濃度は基準値の6倍超え」

「え……あ、え?」

「車体は左側が大きく破損、運転手は肋骨を折る重症を負うが命に別状はなし」


淡々とそう告げる彼を、しばしぽかんと見つめることしかできなかった。


なにをテキトウに。デタラメに。

この人、音がした方にずっと背中を向けてたもん。わかるはずない。


そしてこういう冗談をおもしろいって思って言ってるなら、いよいよやばい。
友達相手ならまあともかく、私たちは初対面、赤の他人だよ。


……だけど、トラックが電柱にぶつかった音だと言われて、正直すごくしっくりきた。

すぐ先の十字路付近で事故があったのは間違いなさそ───



「お前はソレに巻き込まれて死ぬはずだった──伊藤りりこちゃん」
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