劣情にmistake
「で、殺したい奴の話だけど。スズコって奴でもいいし、その取り巻きでもいい、どうする」

「な、なんで夏川くんが勝手に決めるの。第一あの子たちはわたしの友だちだし……」


「見てればわかるだろ、おまえ、友達って言いながら心底嫌そうな顔してたけどね」

「それは……」

「好きでもない奴らと一緒にいるの、りりこは物好きだな」


確かに、わたしはあのグループに馴染めていないと思う。

でも、どこへ行ってもきっとそうなる。

誰かが消えても変わるわけじゃない。それに、わたしは友達のこと、こう見えても大好きだ。


自分は生かされる代わりに、自分以外の人が死ぬなんて耐えられないよ。
ましてや、自分の知り合いが死ぬなんて考えられない。


「夏川くん、わたし、誰かを殺して自分が生きるなんて耐えられないよ」

「へえ、でもおまえ、あいつらのこと嫌いなんだろ?」

「嫌いじゃないもん。殺せないよ、友達だもん」

「友達って薄い関係のこと言うのな」


「夏川くんにはわかんない?」

「何が?」

「たとえわたしが友達のことを嫌いでも、殺していい理由にはならないんだよ。誰かを殺して自分が生きるなんて選択そもそもないの。そういうものだよ」

「……普通、おまえを生かしてやるって言われれば、誰でも殺したい奴の1人や2人、名前を挙げてくるけどな」


「それが普通なの?」

「人間なんてそんなもんだろ。いつだって自分本意で自分勝手。みんな“生かしてくれ”って泣き喚くか怒り狂うか、そんな奴ばっか」

「そっか、じゃあ私がおかしいのか」

「知らないけど」

「でもね、わたし、誰も傷つけたくないの。運命でわたしが死ぬことになってるならそれでいいの」
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