劣情にmistake
ごめんね、夏川くん。

たまたまわたしを救ってくれたのかもしれないけれど、明らかに人選ミスだよ。

わたし、自分でもびっくりするくらい適応能力が高いみたい。もう自分が消えることを受け入れちゃってる。


「それに、死ぬ時夏川くんが一緒にいてくれるんでしょ?」


ふふ、とそう言ってわたしが笑うと、夏川くんが面食らったように眉を顰めた。

あ、わたしの言葉に初めて大きく表情が動いたな、と思いながら。


「夏川くんと一緒に死ねるなら、わたし、それでいいや」


死神に大胆なことを言ったなと自分でもおもうけど。

夏川くんが一緒にいてくれるなら、消えるのだって怖くない。

その代わり、あんまり痛めつけずに殺して欲しいな。
なんて言ったら、夏川くんはまた怒るかも。


「……りりこ、おまえを殺すのは惜しい」

「え? 何?」

「なんでもない、もう少し考えろ、タイムリミットまでまだ1日ある」


そうか、タイムリミットは明日の夜─────


「……今日もうちで寝るの?」

「そのつもりだけど」


やけに冷静な夏川くんは、「ひとりになりたいんだろ、家で待ってるから早く帰ってこいよ」と言って姿を消した。

実感の湧かない明日の死よりも、家で誰かが待っている、そっちの方が変な感じだ。
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