劣情にmistake


家に帰ると、夏川くんはソファに座って本を読んでいた。死神も本とか読むんだ。


「夏川くん、今日もご飯食べる?」

「どっちでもいいけど」

「薄情だなあ、最後の晩餐なんだから付き合ってよ!」

「お前を殺すって言ってないけど」

「頑固だね夏川くん」

「どっちが」


納得していない表情でこちらを向く。

でもなんかいいな。夏川くんには本音で話せている。彼が死神だからかもしれないけれど。

ソファから視線を上げてわたしを捉えた夏川くんの視線はやけに鋭い。まるで離さないとでも言ってるみたいだ。


「りりこ、今日も一緒に寝るか?」

「なにそれ、最後の夜だから?」

「最後って、おまえ死ぬ気満々じゃねーか」

「出会った時からそう言ってるでしょ」


「どんだけ傲慢な女なわけ」

「昨日は勝手に布団入ってきたくせに」

「相変わらず生意気」


確かに、死神に向かって反論するのは生意気かもだよね。
でも夏川くんが親しみやすいからだよ。
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