劣情にmistake
今日の出来事を思い出しながら夏川くんとご飯を食べて、昨日と同じようにお風呂に入って寝る準備を整えた。
よく、“明日地球が滅亡するとしたらどうする?”という雑な質問があるけれど、終わりを知っていても意外と日常を変えるのって難しいみたい。
まあ、夕飯は大好物のハンバーグとオムライスにしちゃったんだけどね。
いそいそと昨日と同じぐらいの時間にベットに入る。
明日死ぬっていうのにフツウに過ごしちゃっていいのかな。
夜更かししてもいいんだけど、寝るのも大好きだし。
お父さんに電話くらいしておこうかな。いや、それは明日でいいかな。
ていうか、別にお父さんだってわたしが死んだところで特に何も思わないかも。
あ、でも最後に駅前のジェラート屋さんは寄りたいかも。チョコミント味が絶品なんだよなあ。
なんてぐるぐる明日のタスクを考えていると、カサリと右側の布団が動いた。
夏川くんが入ってきたんだ。
死神だからなのか、近くに寄ってくるまで気配がないからいつも気づかない。
「また黙って入ってきたの、夏川くん」
「今日も一緒に寝るかって聞いたろ」
「そうだっけ」
そういえばご飯の前にそんなことを聞かれたっけ。昨日は何も言わずにやってきたくせに。
温度はないはずなのに、急に布団の中があったかくなったような気がした。きっと夏川くんじゃなくて私の体温が上がったせいだ。
「夏川くんってきれいな顔してるよね」
「何、口説いてんの?」
「はは、事実を言ってるだけだよー。生きてた時すっごいモテたでしょ!」
「記憶ないから」
同じ学校にいたら、女の子はみんな夏川くんのことを好きになっていたかもしれない。
そう思うとちょっと嫌だな。
夏川くんが死神でよかった、なんて。