劣情にmistake
ぎゅっとつよく抱きしめられる。

死神なのに、温度があるわけじゃないのに、暖かいと感じてしまうのは何故だろう。

ぬるい温度がやけに心地よくて嫌になる。離れ難い、明日にはもうわたしはこの世からいなくなってしまうのに。


「りりちゃん、初めて生かしたのが、おまえでよかった」


なに、どうしてそんなことを言うの。

抱きしめられているせいで表情がよく見えない。でも力の強さが増すのを感じた。

夏川くん、やっぱり人の死を管理するには優しすぎるんじゃない?


「ごめんね、せっかく生かしてくれたのに、自ら死ぬのを選んで、ごめん」


そう言ってから返事はなくて。少しの沈黙の後。


「……それでも俺は、お前との未来が欲しいよ」


─────え。

かすれた声が耳に届いて、それから少しだけぐいっと身体を離される。鋭い視線が絡んだ。逃れられない、と思う。


「嫌なら殴れ」


そう短く告げられて、夏川くんの唇が自分のそれに重なった。

驚いて咄嗟に彼の胸板を強く押したけれど簡単に手首を掴まれて止められる。

なに、突然、なんで。
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