劣情にmistake
変だよね。死ぬって決めたのは自分なのに。


「じゃあ、始めようか」

「……はじめる?」

「俺は死神だけど、直接手を下すことは出来ない。あくまで人の死を管理するのが仕事だから」

「えーっと、つまり」

「おまえは自分で死ぬんだよ。ここから飛び降りてね」


ああそっか。やっぱりわたしの死因は飛び降り自殺なんだ。

ごくりとつばを飲み込んで覚悟を決める。

すると、夏川くんがわたしにゆっくり近づいてきた。

日が落ちてきたから、もう日陰にいなくてもいいみたい。


「……惜しいな、おまえを死なせるのは」

「そんなこと言ってくれるの、たぶん夏川くんだけだよ」

「おまえのそういうところ、余計気に食わない」

「そういうところって?」


「死に際のくせに、やけに堂々としてるところ。少しは泣いて見せたら」

「だって、夏川くんが覚悟決めろって言ってたもん」

「ふ、昨日はあんなに泣いてたくせに」


え。そうか、思い出せば、夏川くんにキスされたとき、私思わずぼろぼろ泣いてしまったんだった。
 
思い出して顔を赤くすると、「可愛い反応できるんだな」とわらう。

ずるい死神!
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