劣情にmistake
「手……離してください」
「いいけど、その代わりにお前が殺したいやつ一人教えてよ。それが条件」
「へ? いや……そんな人いないです」
「死ぬはずだったお前が死ななかった。だから代わりの誰かが死ななきゃいけない。数字はきっかり合わせないといけないからね」
にこっと柔らかい笑顔の裏に、凍てつくほどの冷たさを感じた。
──ああ、やっぱりこの人は死神かもしれない。
死神じゃなくても、それと同等の恐ろしい存在なのは間違いない。
今、無理やり手を振りほどいて逃げたとしても逃げ切れる気がしない。
物理的にはもちろんだけど、今もう既に、目に見えないもので縛られている気さえしてくる。
恐怖のせいか思考が鈍くなる。
しまいには、どうにでもなっちゃえ、と、とつぜん諦めの境地に入ってしまった。
だって……大層な人生歩んでないし。
しにたいとか思ったことないけど、しぬならべつにそれでいいもしれない。
特に夢もないし何か熱狂的にハマっているものがあるわけでもないし。
友達のことは好きだし大事だけど、それだけ。
“きらきらJK(笑)”、楽しいよ。みんなといるとき、ちゃんと心から楽しいなって思ってる。
ただ、それ以上でもそれ以下でもない。
自分のこういう薄っぺらいところ、ずっときらいだったんだよね。
強いて言うなら誰かと恋人になって愛し合ってみたかったけど、気になってた人にはこの前彼女がみたいだし……ザンネンでした。