あなたは一体誰?

──『記念日といえば、奥様へのプレゼントは?』

『いや〜やっぱアクセサリーとかですかね』

東京のブランドショップが立ち並ぶ歩道で、街頭インタビューに応じる夫と同じ歳くらいの男性をテレビ越しに見ながら、私はテレビの電源をオフにした。

そして朝食を2人分並べるとカレンダーを横目にため息を吐いた。

「来月……結婚して10年か」

私はアンティークのチェストの上に飾られた結婚式の写真に目を映す。写真は夫の職場から贈られたガラス製のフォトフレームに入っていて、『Happy Wedding Takaaki &Misato』の文字が刻まれている。


私と夫の間に子供はいない。

私はあることをきっかけに勤めていた美容室を辞め、専業主婦になった。正直、好きな仕事を辞めるのに抵抗はあったが、研究職で徹夜で仕事をすることも多い夫の孝明(たかあき)を妻として支えたかった。彼との子供を授かりたかった。

──夫を本当に愛していたから。

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