あなたは一体誰?
その夜、孝明は宣言通り帰ってこなかった。
そしてその次の日も。孝明に何かあったのではとLINEをしたが孝明からは『仕事が忙しい。しばらく帰れない』とだけ返事があったきり、電話をしても一度も話すことはなかった。
もうこのまま孝明は家に帰ってこないのかもしれない。そんな考えが芽生え始めた1ヶ月後だった。
──ガチャ!
玄関の扉が開く音がして私は慌てて玄関へ駆けていく。
「美里、ただいま」
「お、かえりなさい……」
一ヶ月ぶりに見る夫の表情は明るく、私に向けて笑顔を見せている。
「はい。これ、気に入ってくれるかな?」
孝明は私に後ろ手に隠していた薔薇の花束を差し出した。
「え……っ、これ……」
「結婚記念日だよね、いつもありがとう」
(いま……なんて……?)
孝明が記念日を祝うなんてことは久しぶりだし、何より私のために花束を買ってきてくれるなんていつぶりだろうか。
「美里? 美里は赤が似合うからと思ったんだけど……気に入らなかった?」
「あ、ううん。ありがとう。嬉しい……」
もう忘れていたが、交際しているときから、孝明は私には赤が似合うと言って花束を贈ってくれるときは決まって赤い薔薇ばかりだった。
(一体どうしたの……?)
そしてその次の日も。孝明に何かあったのではとLINEをしたが孝明からは『仕事が忙しい。しばらく帰れない』とだけ返事があったきり、電話をしても一度も話すことはなかった。
もうこのまま孝明は家に帰ってこないのかもしれない。そんな考えが芽生え始めた1ヶ月後だった。
──ガチャ!
玄関の扉が開く音がして私は慌てて玄関へ駆けていく。
「美里、ただいま」
「お、かえりなさい……」
一ヶ月ぶりに見る夫の表情は明るく、私に向けて笑顔を見せている。
「はい。これ、気に入ってくれるかな?」
孝明は私に後ろ手に隠していた薔薇の花束を差し出した。
「え……っ、これ……」
「結婚記念日だよね、いつもありがとう」
(いま……なんて……?)
孝明が記念日を祝うなんてことは久しぶりだし、何より私のために花束を買ってきてくれるなんていつぶりだろうか。
「美里? 美里は赤が似合うからと思ったんだけど……気に入らなかった?」
「あ、ううん。ありがとう。嬉しい……」
もう忘れていたが、交際しているときから、孝明は私には赤が似合うと言って花束を贈ってくれるときは決まって赤い薔薇ばかりだった。
(一体どうしたの……?)