エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

プロローグ

「間に合うかな？」
「大丈夫だよー！　時間に余裕をもって出てきたもん」
「すごい楽しみー！」
　空港に向かう電車の中で交わされている会話を倉木(くらき)莉桜(りお)は微笑ましく聞いていた。
　改めて自分もスマートフォンで時間を確認する。そして画面を切り替えてアメリカのシカゴの天気を確認した。

　現地の天候は晴れ。十月のシカゴは紅葉も美しく、朝晩が涼しくて過ごしやすい季節とも言われている。
　これならば旅行で行く人も喜ぶだろうと、莉桜はスマートフォンをカバンにしまった。
　空港の最寄り駅到着のアナウンスを聞いて、手に慣れたキャスターバッグを引き電車を降りる。電車を降りた莉桜は乗客とは違う方向へ歩き始めた。

　全く染めていないロングヘアの黒髪は出社してからまとめなくていいように夜会巻きに綺麗に巻いてある。
　莉桜はキャスターバッグを引いて空港ビルと並んで建っている会社のビルの中に入った。
　エレベーターのボタンを押すためにICカードキーにもなっている社員証をリーダーにかざしロッカールームのある階のボタンを押す。