エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 海外では客室乗務員は日本のように一目置かれる職業ではないが、少なくとも子どもとバカにされるような謂れはないことをハッキリと主張した。莉桜の真っすぐな視線に彼女はたじろいだ。
 まさか、バンビのような可愛らしい雰囲気の女性が自分に楯突くとは思いもかけなかったようだ。

 さすがに雰囲気を察して、五十里が莉桜の肩を抱き寄せる。
『そういうことだ。マイスイートは本当にかっこいい。悪いなアンジェラ、今日は完全にプライベートなんだ』
(マイスイート!? 初めて聞いたわ)

 五十里は莉桜をうっとりと見つめ、手を取ってその指先にキスをした。
『俺は彼女に惚れ込んでいるんだよ』
 恥ずかしくて莉桜が両手で顔を覆いたくなるようなことを五十里は平然として言い続ける。
『アイコビック社の方たちとはまた別の機会にご一緒していただきたい』

 五十里が彼女の後ろにいた人たちへ笑顔を向けると、彼らも『また今度』と気軽に五十里に返事をする。彼女は歯ぎしりの音が聞こえそうなくらい奥歯を噛みしめて莉桜を睨んでいた。

 そんな気配にも気づいているだろうに五十里はそれはそれは魅力的な笑顔を彼女に向けた上で莉桜の肩を抱き『失礼する』と言ってその場を去った。
(楽しい雰囲気だったのに、台無しだわ!)
< 100 / 131 >

この作品をシェア

pagetop