エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 一足先に機内へ入って準備していた莉桜たち客室乗務員は乗客一人一人に記念品を配布した。
 わくわくと嬉しそうな顔で機内に入っていく乗客を見ていて、まさにこれからが今まで行ってきた訓練の結果を試されるのだと、莉桜も気合が入る。

 莉桜は今日プレミアムエコノミーシート担当だった。それでも乗客として入ってきて、ビジネスシートに座る五十里の姿は目に入る。
 莉桜の姿を見て五十里は軽く片手を上げた。莉桜は丁寧にお辞儀をする。

 五十里はこの初就航で乗務員として搭乗している莉桜と一緒にロスまで行って、そのままこの飛行機で帰ってくるらしい。それは五十里重工役員としての仕事だということだった。

 帰国したのち莉桜は長期休暇をとることにしていた。実は五十里も一緒に休暇を取っていて、二人で旅行へ行く予定にしているのだ。
 モルディブに行くとは聞いていたけれど、それ以外のことを五十里はすべて秘密なのだと言って、どこに宿泊するとか、どこの航空会社を使うとかも教えてくれない。

 五十里が自分で全部手配してしまったようなのだ。すべてサプライズなのだと楽しそうにされてしまっては莉桜も口を挟むことができなかった。
 帰国してからのその旅行を莉桜も楽しみにしていた。
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