エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 もちろん席が分からない様子であればご案内もする。
 まずはファーストクラス、続いてビジネスクラス、プレミアムエコノミーとプライオリティシート、最後にエコノミーの順でご案内してゆく。
 今日は遅れて機内に入る人はおらず、とてもスムーズに全ての乗客が揃ったようだ。

 改めて莉桜は担当のビジネスクラスに移動し困り事がないかを見て歩き、離陸時のシートベルトの着用を確認する。
 ビジネスクラスのお客さまはたいてい飛行機にも慣れているので離陸前にはきちんとベルトをしている人がほとんどだ。それでも一席ずつ確認してゆく。

 席について落ち着いたお客さまには飲み物のオーダーのお伺いにも行かなくてはいけない。
 エコノミークラスではカートで提供されるドリンクだが、ビジネスクラスでは冷たい飲み物ならグラス、温かい飲み物はカップとソーサーで提供されるので、その準備もしなくてはいけないのだ。

 ビジネスクラスは座席数こそ少ないが、サービスがよりきめ細かくなるため、客室乗務員としてはひとつの席辺りのお客さまにゆっくりとサービスを提供するというところがエコノミークラスとは違うところになる。

「倉木さん……」
 大島に莉桜はギャレーへ呼ばれる。ギャレーとは乗客に提供する食べ物の準備や調理をするところだ。大島は普段と変わらないように見えるが、表情は少し困惑を含んでいる気がした。
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